好奇心ポルノ

松田:だから…おれこの一週間で、回線全部で40個くらい契約したと思うねんな

中垣:やば。

横行するiPhone安値販売のカラクリ 業界からも懸念 – 日本経済新聞

松田:それでさ、先週中垣が「それもまたすぐ飽きてやめるでしょ」みたいなこと言うてたやん。それについてちょっと考えててんけど、やっぱそうなのよ。

中垣:考えてたんや笑

松田:まあそれをやるにあたって、確かにキャッシングの残高を減らさなあかんという不可避な要請はあったけど、とは言えどちらかというと、やっぱりおもしろかったからやってたわけよね。

中垣:はいはい。

松田:そうすると、ある程度までやると見える景色が分かってきちゃうわけやん。もちろん最初はおもしろかったよ。こんなバグった仕組みが当たり前のように存在すんのかっていう、それがおもしろくてやるわけやけど、でもある程度までいくと次に何が起こるかが分かっちゃうから、じゃあもういいですってなってやめちゃう

中垣:なるほどね。

松田:これ以上やろうと思うと、まずは名義を貸してくれる人を集めて、代理店とツーカーになって大量に端末を流してもらわなあかんのよ。でもそこまでやっても一番最初の興奮はもう得られんやん、だから辞めちゃうわけ。おれそういうのばっかり、まじでずっとそういう感じ。

西川:笑

松田おれにとってはiPhoneを転がすのも、エルメスのジュエリーをコレクションするのも、FXもボルダリングも全部一緒やねん。ランニングも一緒。今まで一通り得意になったことは全部一緒。

西川:はいはい。

松田:あとはコマの縦横比も若干違ってて、現行のモデルはコマの短径がコマの線径2本分よりギリギリ大きくてコマが空転することができるねんけど、ひとつ前のモデルは短径がギリギリ小さくて、コマが空転することができひんねんな。

倉留:うんうん。

松田:これは現行の方がより改善されていて、コマが空転できないとチェーンがぎこちなく絡まることがあるねんな。

中垣:うんうん、そうやんね。固っちゃうんやんな。

松田:これはブレスレットのクレッシェンドもそうやし、ネックレスのクレッシェンドもそうやねん。ほんまに微妙な差やねんけど、これだけで着用感は全然違ってくる。

Source: commmon

[c]エルメスのブレスレット、クレッシェンド

松田:今まで知らんかったタイプの刺激を発見して、「こんなことができるんやね…」みたいな興奮を求めて取り組むけど、でもある程度までいったらちょっと傾きが緩やかになってくるというか、なんかまあ逓減してくるやん。それでもうおしまい、飽きちゃう。

西川:へー。

松田そういう刺激が得られる限りにおいて、何をするかに貴賤はないの。確かにiPhoneを転がすのはしょうもないとも言い得るが、別におれにとっては今まで登れなかった岩に登れるようになるのとか、いろんなジュエリーを手にするのと同様におもしろいねん。

西川:うんうん。

松田:あるいはiPhoneを転がすのはやはりしょうもないと言うのであれば、その他のいかにも興味深いもの全てがしょうもないの。その線ではジュエリーなんてまじでどうでもいいもん。それで考えてんけど、やっぱりこうEDMっぽいというか…ポルノっぽいのよ。これは好奇心ポルノなのよ

中垣:うんうん。

松田:何を習得するにあっても最初は完全な手探りから始めるわけやけど、それがある程度身を結ぶまでの成長の傾きみたいなのってそれなりに急なわけやん。そしておれは、このフェイズはめちゃめちゃ得意やねん。だからなおのこと、最初に傾きが鈍くなるところまでの時間がむっちゃ短くて、つまりその部分の傾きはえげつな急やねん。

中垣:うんうん。

松田:でもそこから先、成長が鈍化した後に続く平たい部分に関しては、そもそもが長く続くものやからやっぱり長いねん。だからおれからしたら、最初のフェイズを繰り返すことが短期的に見たら一番楽しいわけ

中垣:そうなるよね。

松田:この結果、確かにいろんなことを知ってるねんけど、でも何のプロでもないわけ。だから仕事にはならない。ほとんど全てのことについて99%の人よりも詳しくなり得るねんけど、それを本職にしている1%の人を超えることはなくて、結局何のプロにもなれないねん

西川:うんうん。

松田:なんかそういうことを考えていて…そもそも食えんというのが問題としてあるし、さらにはさ、既にある複雑な何かを克服していくことに楽しみを見出しているから、要はこれゲームをやってるのと一緒やねん。

中垣:そうやんな。

松田:おれはいわゆるゲームは嫌いやけど、それはあまりに単純やからやねん。でもおれも結局のところ、今まで存在した誰かの経緯によってできあがっている、そういうゲームに取り組んでるに過ぎひんねん。

西川:はいはい。

[c]雑誌も動画もあんま好きじゃないんだよな

松田:そら確かにスマブラ強い人はすごいけど、「ところでそのゲームには開発元の任天堂という会社があってやね…」って話やん。やはり取り組むのであればそっちの方が意味があるというか、自分もそうあらなければいけないと思ってる。でも短期的には、既にあるゲームの最序盤でガキーンって登ってるのが楽しくてずっとやっちゃう。

Image: commmon

松田:で、その先にある成長が鈍った台地の部分、ここをうまく耐えるのか、あるいはそのフェイズではより解像度の高い眼差しを持つようにするのか、いずれにしてもどこまで続くか分からへんその台地を、またいつか現れるガキーンの部分まで歩いて行けるようにならなあかんなって

中垣:うん…うんうん。

松田:最初のガキーン、これは既にあるシステムを学んでそれを乗りこなす部分やねん。でも2回目のガキーンあたりからは、自分がそのシステムに関与して変更していくフェイズなわけ。これをせんかったら生きてる意味がない

When you grow up, you tend to get told the world is the way it is and your life is just to live your life inside the world. Try not to bash into the walls too much. Try to have a nice family life, have fun, save a little money.

That’s a very limited life. Life can be much broader once you discover one simple fact, and that is – everything around you that you call life, was made up by people that were no smarter than you. And you can change it, you can influence it, you can build your own things that other people can use.

The minute that you understand that you can poke life and actually something will, you know if you push in, something will pop out the other side, that you can change it, you can mold it. That’s maybe the most important thing. It’s to shake off this erroneous notion that life is there and you’re just gonna live in it, versus embrace it, change it, improve it, make your mark upon it.

I think that’s very important and however you learn that, once you learn it, you’ll want to change life and make it better, cause it’s kind of messed up, in a lot of ways. Once you learn that, you’ll never be the same again.

Source: Wikipedia

Think different – Wikipedia

中垣:うん、そんな気はする。「あ…やっぱ変わっていってる」っていう手応えみたいなのがあるのはそこやんな。内的な喜びだけであれば最初のところだけでいいんやろうけど…

[c]進歩主義的価値観と今ここの豊かさの対立

松田:何より台地部分、ここはひたすらに長い上に、どこまで続くかが分からへんねん。いくら要領よく物事を吸収することができても、この部分は短くはならへんねん。

中垣:そうやんなぁ…そうやと思うなぁ。

松田:そら最初の美味しいとこだけ繰り返してたら楽しいねんけど、でも何にもならへんねん。これは罠やで。

はめられたぁ

松田:これは辛いよ。さっきはボルダリングって言ったけど、それにしたって一通りできるようになるまではかなり早かったと思うねん。それが身体の動きであっても、何かを見て言語的に理解してそれを再び自分に落とすことはできるから、上手い人のムーブを見てそれを真似するのは比較的簡単やってん。だから、1級の課題であればぱっと見で登れるくらいまでにはなったのね。

中垣:うんうん。

松田:でもそれ以上ってなってくると、みんなででかいマットみたいなんを背負って外岩に行くとか、なんかそういう感じになってくるわけ。「いや…そこまではせんよ」って話なの。

中垣:そういうことね。

松田:あるいは毎日10km走ってたときも、まず走ったことがなかったから最初は全然やったの。そもそも10km走り通すのが無理やし、走り通せたとして60分とか70分とかかかるの。

中垣:うんうん。

松田:でもやってるうちに10km40分で走れるようになったのね。ここまでは超楽しかったよ、最初と比べると体感のスピードも全然違うし。でも…じゃあここから30分台前半を目指すかって言ったらそうはならんわけ。別に走ること自体が好きなわけではないし、それだけがアイデンティティでもないし

中垣:いやぁ…うん。

10km数十分もかけて走ってNike Run Clubのスクショインスタに上げてるやつ、まじでなんなん?

松田:「じゃあいいです」ってなるわけ。これはもうエルメスもiPhoneもFXも全部そう、おもろいけどそれだけ。最初のうまみがある部分が終わったらもう終わり。

中垣:いやぁ、でもなんなんやろうね。超分かるというか…例えばいわゆる部活動的なものって、松田の言う台地の部分をちゃんとやり通すってことやと思うし、あるいはサラリーマンもそうやと思うねん。もちろんその結果として得られるプロフェッションみたいなのはあるんやろうけど、でもその過程を見てみると自分がやろうとは思えないっていう。

松田:まあせやな。仕事もそうで、もうそういうもんやと思って取り組んどったらね、ええんやろうけど。無理やけど。

中垣:でもおれそれ系の成功体験一個だけあるわ。浪人生のときってそんな感じやった。

松田:へー。

中垣予備校はそんな感じやった。別に浪人生になって性格が変わったわけじゃないけど、言うても予備校ってよくできてて、朝9時から夜9時まではそこにおって、ライバルもおって、やってるうちに楽しくなってきて…そしたらもう普通に受かったもん。

松田:なるほどね。

中垣:危機感もあったしね。そういう謙虚さみたいなんは大事なんかな…いやでも分からんな。

西川自分で辞められるかどうかっていうのはあるなって思う。今は会社に所属してるから、わざわざそれを辞めるのも面倒だし不安だし、そうやってやり続けるから結果としてプロフェッションになるみたいな。

松田:うんうん。

西川:でも松田とかは「これはこんなもんだな」って思ったら辞めちゃえるわけだから…

松田:せやねん。まあそれでも続けるっていうのがね、おれがもっとも理想的に偉い人であればできるんやろうね

なんやその意味不明な仮定…

西川:私はあんまり…それが松田にとって問題として捉えられているっていうのが意外だった。なんか別に、それはそれでって思ってやってそうじゃん。

松田:うん、まあわざわざ問題として取り上げている部分は多少あるよ。一方でじゃあ、全く問題じゃないと思っているかというとそうではないねんけどな。

西川:うんうん。

中垣:うん、でもそこが松田がおもろいなとおれが思ってるとこやけどね。たぶん松田が日々生きていく上では何も問題ではなくて、ただ松田は東京に住んでるねん。これがおもしろい

松田:はいはい。

中垣:だからやっぱりそういうことが問題になり得るというか…だって東京にいるからね。これが長野の山奥とかなら、そんなことは気にせずに好きなように生活できるねん

松田:そうやんな、全てを自分で解決する健やかネイチャーライフ送れてたはずやんな。

西川:笑

松田「今日は中古の発電機をいただいてきました! ワクワクです!」みたいな。

中垣:そうそう笑 でもそうじゃないねん。

西川:あー…なるほど。

松田:せやねん。別にシャンパンだって出てくるんなら飲むし、それで楽しいねん

中垣:松田普通にパーティー大好きやもん。

松田:それはそう、本当に。

中垣:なんかでもさ、最初のガキーンの部分が好きならそれに振り切るのもありな気はするねん。でもじゃあ今それに振り切れてるかって言ったら、別にそうでもないわけやん。シンプルに…寝過ぎてるとかね。

松田:うんうん。

12時間睡眠、6時間睡眠の倍幸せ

中垣:だからそういう振り切り方もありな気はするよ。てか松田、もっといろんな人に認知された方がいいと思うけどね。

松田:あー…

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Image: Apple

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中垣:松田をおもしろいと思う人って世の中にたくさんいると思うねんけど、そこまで知られていないわけで。でもそれがもっとたくさんいれば、普通に食べていける気はするねん。

松田:まあそれはね。あとは謙虚モードであれば低成長の台地も乗り越えられる仮説があるけど、最近謙虚ではあるからそこの望みはあるよ

謙虚の自認は即不遜なのよ

2022年1月16日
Aux Bacchanales 紀尾井町

[tip]